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春日山原始林入門講座  第3回 動物編を実施しました。

本日、春日山原始林入門講座の第3回を実施しました。

1月から月1回のペースで実施してきた入門講座も最終回です。

今回は、「動物編」として、以下の講義を行いました。

・春日山原始林のほ乳類 講師 鳥居春巳 さん(奈良教育大学 特任教授)

・春日山原始林の野鳥  講師 川瀬浩 さん(日本野鳥の会 奈良支部)

最終回ということもあり、今回は最後に参加者の方々から意見を伺うフリーディスカッションも行いました。

■ 春日山原始林のほ乳類

鳥居先生は、長年春日山原始林のシカを研究されており、奈良県の「奈良のシカ保護管理計画検討委員会」の委員も努めていらっしゃいます。そのため、冒頭は奈良公園のシカ、及び春日山のシカの話を中心にお話しいただきました。

基本的なこととして、奈良公園の平坦部と春日山にいるシカは「別の生き物」と考えた方が良いというくらい、違っているそうです。人間に慣れている平坦部のシカと、人になれていない春日山のシカとは、修正も大きく違うということでした。

また、原始林内のシカについては、周遊道を時速10キロ位で走りながらライトを照らし、反射したものを数える「ライトセンサス」という方法と、決められたエリアを横並びに一斉に歩きながら調査する区画法の二つを行い、そこから想定して概ね90頭程度が生息しているのではないかとのことでした。

この頭数が多いか少ないかという点については、環境省が提示したシカの適正頭数というのがあり、それで考えると原始林を約300ヘクタールと考えると2頭程度ということで、原始林内も奈良公園の平坦部同様にシカが相当増加しているということでした。

それでは、シカ以外にどのような生き物が生息しているのか。

モグラやコウモリ、サル、ウサギ、リス、ネズミ、イタチ、タヌキ、アナグマ、イノシシ、などの他、外来種とされるハクビシンやアライグマ、ヌートリアなども観測されているということでした。

ただし、これまでに観測されているものなので、現在は絶滅しているものもいるのではないかということでした。

その理由として、原始林の乾燥化により、これらの動物たちの生息する環境が少なくなってしまっている。ということです。

県が設置している植生保護柵などを作ることで、下層植生が少しでも回復していくことで、ほ乳類の生息環境が整えば戻ってくるのではないかというお話もいただきました。

鳥居先生のお話は、少し過激な発言とユーモアが入り交じりとても興味深く伺うことができました。

■ 春日山原始林の野鳥

次に、日本野鳥の会奈良支部の川瀬さん(つなぐ会副会長)から、原始林の野鳥についての講義となりました。

原始林内には、過去の記録で、周遊道を廻って10回以上アカショウビンの声を聴くことができたという記録が残っているそうです。

30年以上にわたって原始林での探鳥会を実施している野鳥の会の記録を見ていくと、このアカショウビンやミゾゴイが過去には記録されているものの現在はほぼいなくなってしまっているとのことです。また、ヤマドリやコジュケイなどの藪を好む鳥なども姿を消していると言うことでした。

また、過去にはいなかったオオタカやキビタキについては、ここ数年、記録されいてるものもおり、記録された鳥の数はほぼ半分くらいにはなっているものの、見ることのできる鳥の種類も変化が出てきており、これらはすべて、原始林の環境の変化が大きく関わっているということでした。

最後に、野鳥の側面からすると原始林の今の状態は絶望的である。ということでした。けれど、何もしないわけにはいかない。少しでも良いから、原始林の生態系を豊かなものへ戻していくことをすることが大切なのではないかということでした。

■参加者の方々とのフリーディスカッション

最後に、会場の方々と今後のつなぐ会の活動について期待することや「こんな事をやりたい!」と行った意見交換の場を持ちました。はじめは遠慮がちでしたが、様々意見をいただき、また、講師の鳥居先生も色々な情報やご意見をいただく事ができ、充実した内容となりました。

次年度以降、具体的な活動に向けて準備を進めているところですが、原始林の未来を皆さんでどのように描いていくか、それは、「つなぐ会」だけでなく、様々な関係者の方々と手を取り合いながら進めることが必要だと感じました。

(文責 事務局 杉山拓次)


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